主婦(仮)6

そんなことより・・美月はまだ何か言いたげだ。

ついに、ついに、私はずっとやりたかったことを実現させてしまいました。
なのにどうしたことでしょう。
なぜか、少し寂しい気持ちにになってしまって憂鬱なのです。

総額にして200万円はくだらない品々をほぼ何もないところから、
想像力とタイピングだけで生み出したのですから、もっとこう、湧き立つような気持ちになると思いました。

ソファは*素敵な名前(仮)*さんと、この家を購入した際に、近隣の家具店を回って
20台くらい座ってみて、一番座り心地が良かったものを出現させました。

揃いの一人掛けのチェアもつけると、予算の十倍くらいの値段になってしまうので
なくなく諦めた、座ると、思わず顔がほころんでしまうような座り心地のソファ。

色もはっきりと覚えていていましたし、あの包み込まれるような感触を我が家に。
と思ったら、わりとすんなり出てきてくれました。

アクアリウムは、二人で行く行きつけのアクアリウムあるバーから拝借しました。
でも明るいところでちゃんとしたアクアリウムを見たことがなかったので、やはり我が家で見てもその周りだけバーのカウンターの明るさになってしまいます。
なぜアクアリウムかというと、たぶんもうすぐ、娘ちゃんが生まれるので、犬猫よりも手間がかからなくて心が癒されそうなものを選んでみた。

あと、吸引力が売りの掃除機もいいな、と思ったのすが、形状も吸引力も曖昧で
これは出てこなくて、記憶力のなさを恨みましがが、

代わりに標準的な安っぽいトイレが、立派な多機能デラックス仕様にできた点は
なかなか私もやるもんだな、と思った。

あと自分の顔を間近でなんでも見るのが嫌でなかなか変えることのできなかった
眼鏡は女性誌を参考に、自分の好みの自分では買えないような金額もものを
選んでみた。

お金を払えば手に入るくらいの、出来事はやはりそれなりで
ソファが、デラックスなトイレが、アクアリウムが出てくるときの
高揚感は確かにあったけれどそれも一瞬のことでした。

そして憂鬱なのです。
私が思っていたのと、違う。
誰か元に戻して欲しい。こんなはずじゃなかった。
どうして、手から、いろいろ出してしまったんだろう。
一体私は何をしたかったのだろう。

私がなるものは、純文学だって、そう決めていたはずなのに。
もう出してしまったので、どのようにそれぞれの商品が出現したかも描くことはできません。
まるでつまらない私の中の、きっと数少ない魅せ場だったのに、それにも失敗してしまい
、与えられたチャンスを逃すタイプの私にぴったりなのかもしれません。

それに夫の態度も気に食わなかったのかも。

もっと、びっくりすると思ったし、嬉しがると思ったのに
いつもとあまり変わらない様子で
あんなにすぐ出したものを消す方法をきくなんて、どうかしていると思う。
*素敵な名前(仮)*さんはどちらかというと無口だから仕方ないけれど、
もっと他に言うことはないのかって。

このままでは小説が、私が、どんどん破綻していってしまうので
誰かの手助けを借りようと思いました。





















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