主婦(仮)10

私は姿を消さず、今日も*素敵な名前(仮)*さんの帰りを待ちます。

その日は妊婦検診だったので、妊婦検診に行きました。

半数くらいはおばちゃんで半数くらいが妊婦さんや、実は妊婦さんなのかなって
感じの女性とスーツ姿の男性が一名混じっていました。

「順調ですね。」
「尿蛋白がずっと引っかかっているんですが、大丈夫ですか?」

「よくあることなので、プラス1くらいだったら気にすることもないでしょう。
様子をみましょう」

「あと小説のことですが、ちょっと登場人物が少ないですね。」
「はあ。」

「あと会話も少ないのでお出ししておきましょう。頭の中でぐるぐる考えているだけでは物語はすすみませんからね。」

「えっ、そんな簡単に処方してもらえるんですか?」

「保険適用外になりますが。そうですね、市の補助もあるのでだいたい七千円くらいで
しょ」

「ササキくん、ちょっとパンフレット持ってきて。」
そういうとベテランっぽい妙齢の看護婦さんがさっとパンフレットを差し出してくれた。

「補助が出るんですね。あ、でもこれって条件があるんですね。県や市町村のPRを盛り込まないといけないんですね。」先生はPCのモニターで次の予約を確認している。
「夫も応援してくれているので、その制度を使ってみます。」

「ササキくん、あとで説明してあげて」
ササキさんは、はい、とも言わなかったけど診察室を出るとわかりやすく説明してくれた。

ちょっと距離が近いな、この人。しかも、すごい説明上手くて、まったくわからなくても
「はい」「はい」と相槌を打ってしまう。すごい、うまい。

しかも前歯の一本がすごく色がちぐはぐでそこだけ注視してしまう。
だめだ、ちゃんと説明してくれているんだから説明をきこう。

ササキさんの説明したことは4つ折りパンフレットに全部書いてあった。
今後は小説について産婦人科の先生がサポートしてくれるみたい。

赤ちゃんのもならず、私についても相談できるなんて、なんて心強いんだろう。

それにしても、産婦人科の先生が見ても登場人物が少ないのか。
この先生の名前は植物の名前でかっこいいんだけど、
珍しい名前なので、植物先生として伏せておきますね。
ありがとう、植物先生。

あと会話も、もっと人間は長く、いろんなことを喋ってるような気がする。
これからはもっと、外に出たら聞き耳を立てて会話を盗み聞きしよう。

きっと医大だろうけど、大学を出ている人は違うな。
予想外の七千円の出費はちょっと痛かったけど、しのごの言ってられない。

語彙ももっと増やしたかったけれど、さらに追加料金がかかるみたいだったので
これからマタニティー用のパジャマも欲しかったので、追加しなかった。

マタニティー用のパジャマについては詳細に語りたかったが、
こうしている間にも残りページが減っていってしまうので割愛しよう。

「自分や旦那さんの名前もそろそろ決めなきゃだめよ」ササキさんは慣れ慣れしく、言ってくる。

「名前はイメージ決まっちゃううんで、ちゃんと決めたいんです」
と反論したかったけど、めんどくさかったのでやめた。


冒頭に出てきたスーツ姿の男性は、夫だった。




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