主婦(仮)12
あと家に帰ったら、薬を飲もう。
「ねー『毎日、3分眺めるだけで目と運が良くなる!幸運のマジカルアイちゃん』って
名前長くない?アイちゃんって呼んでいい?」
「君、初めて見るね。よろしく。俺はチャド。こっちはライアン。で、これがサリー。
」
人間だったらきっと彫りが深くて、なんだかオシャレっぽい集団の中に私は挟まっている。
Chad Moore/ Bridge Of Sighs
毎日、3分眺めるだけで目と運が良くなる!幸運のマジカルアイ
Ryan McGinley/ You And I
SALLY MANN /IMMEDIATE FAMILY
違和感を感じながら、1日におよそ3分見つめられながら
いつか運が良くなるのを祈りながら日々を過ごしました。
3人と他の連中は私にはさっぱりわからないことを良く語り合っていて、
自分の価値についてさりげなく自慢話しを盛り込んでいるのは、写真に無知な
私にもわかったので、なるべく耳に入れないよう通り過ぎようと思いました。
でも私は根っからの実用書なので、そもそも存在価値が違うから、
そんなの気にしちゃいけないよねって、実用書仲間に話しかけられたら
どんなにラクだったのか。
ここには実用書らしい実用書はなくて、「ネイティヴはこう話す。」さんは
なかなか日本語を使ってくれず、さすがはネイティヴだし、たぶん私よりも長いこと棚に挟まったままでした。
目も悪く、運も悪い所有者は、たまに彼らを転売しているようで
「いい気味だわ。」と思っていたのは内緒です。
そして最初は毎日のように眺められていたのに、それがだんだん感覚が空いて、
数日おき、そして1ヶ月も経たないうちに私のことは気にかけてもらえなくなった。
っていう夢を見た。
この薬ってこういうものなのかしら、心配だから次の受診のときに
きいてみよう。
「確かに登場人物は増えたけど、もうちょっと感じのいい人は出てこないかな。
ねぇ、*素敵な名前(仮)*さんどう思う?」
「*主婦仮)*、今日のことだけど」
「え、なんの話しだっけ?最近記憶力が悪くて、色んな設定を忘れちゃうんだよね。
もう寿命かな。」
「今まで、黙ってて悪かった。っていうのはなしね。あと、謝るのもだめです。
逆に今まで付き合ってくれてありがとうってお礼を言わないといけないと
思うんです。」
どこから、ともなく佐々木さんも現れた。
さすが、処方された薬。
「すみません。お宅にまでお邪魔して。」
「いえいえ、そんなそんな、そこは、ほら私、小説ですし、ちゃんとわきまえていたつもりなので」
「今、お茶を!」
「いえ、そんな、材質が紙で身重な方にそんなことはさせられませんよー。
つわりもあるって訊いてますし。大丈夫ですか?」
「えー、*素敵な名前(仮)*そんなことも、話すんですか?参っちゃうな。」
そのとき*素敵な名前(仮)*さんは、ようやく動いた。
お茶を淹れてくれるようだ。
「お料理も上手で、しかも、作れないときはちゃんとお金も渡してくれて
とってもいい方だってきいています。私なんて、ずっと実家暮らしだったので料理も
ロクにしたことがなくて」
亡くなったはずのお義母さんもいつも間にか、いた。
「*素敵な名前(仮)*ったら、最初に話しをきいたときは、もう信じられませんでしたよ。
」
そうだ、私がうまくやっていく自信がなくて、けっこう昔に亡くなったことに
していたんだった。
「お義母さん!いつからそこに。って夜分すみません!お邪魔してます!」佐々木さんも、ちょっと驚いていた。
やっぱり、お義母さんは緊張するのね。
佐々木さんは、物腰が柔らかくて私となんだか似ているので、仲良くなれそうな気がした。ずっとこうして他愛のない話しができそうな、そんな気配を感じていた。
ここまでは。
「ねー『毎日、3分眺めるだけで目と運が良くなる!幸運のマジカルアイちゃん』って
名前長くない?アイちゃんって呼んでいい?」
「君、初めて見るね。よろしく。俺はチャド。こっちはライアン。で、これがサリー。
」
人間だったらきっと彫りが深くて、なんだかオシャレっぽい集団の中に私は挟まっている。
Chad Moore/ Bridge Of Sighs
毎日、3分眺めるだけで目と運が良くなる!幸運のマジカルアイ
Ryan McGinley/ You And I
SALLY MANN /IMMEDIATE FAMILY
違和感を感じながら、1日におよそ3分見つめられながら
いつか運が良くなるのを祈りながら日々を過ごしました。
3人と他の連中は私にはさっぱりわからないことを良く語り合っていて、
自分の価値についてさりげなく自慢話しを盛り込んでいるのは、写真に無知な
私にもわかったので、なるべく耳に入れないよう通り過ぎようと思いました。
でも私は根っからの実用書なので、そもそも存在価値が違うから、
そんなの気にしちゃいけないよねって、実用書仲間に話しかけられたら
どんなにラクだったのか。
ここには実用書らしい実用書はなくて、「ネイティヴはこう話す。」さんは
なかなか日本語を使ってくれず、さすがはネイティヴだし、たぶん私よりも長いこと棚に挟まったままでした。
目も悪く、運も悪い所有者は、たまに彼らを転売しているようで
「いい気味だわ。」と思っていたのは内緒です。
そして最初は毎日のように眺められていたのに、それがだんだん感覚が空いて、
数日おき、そして1ヶ月も経たないうちに私のことは気にかけてもらえなくなった。
っていう夢を見た。
この薬ってこういうものなのかしら、心配だから次の受診のときに
きいてみよう。
「確かに登場人物は増えたけど、もうちょっと感じのいい人は出てこないかな。
ねぇ、*素敵な名前(仮)*さんどう思う?」
「*主婦仮)*、今日のことだけど」
「え、なんの話しだっけ?最近記憶力が悪くて、色んな設定を忘れちゃうんだよね。
もう寿命かな。」
「今まで、黙ってて悪かった。っていうのはなしね。あと、謝るのもだめです。
逆に今まで付き合ってくれてありがとうってお礼を言わないといけないと
思うんです。」
どこから、ともなく佐々木さんも現れた。
さすが、処方された薬。
「すみません。お宅にまでお邪魔して。」
「いえいえ、そんなそんな、そこは、ほら私、小説ですし、ちゃんとわきまえていたつもりなので」
「今、お茶を!」
「いえ、そんな、材質が紙で身重な方にそんなことはさせられませんよー。
つわりもあるって訊いてますし。大丈夫ですか?」
「えー、*素敵な名前(仮)*そんなことも、話すんですか?参っちゃうな。」
そのとき*素敵な名前(仮)*さんは、ようやく動いた。
お茶を淹れてくれるようだ。
「お料理も上手で、しかも、作れないときはちゃんとお金も渡してくれて
とってもいい方だってきいています。私なんて、ずっと実家暮らしだったので料理も
ロクにしたことがなくて」
亡くなったはずのお義母さんもいつも間にか、いた。
「*素敵な名前(仮)*ったら、最初に話しをきいたときは、もう信じられませんでしたよ。
」
そうだ、私がうまくやっていく自信がなくて、けっこう昔に亡くなったことに
していたんだった。
「お義母さん!いつからそこに。って夜分すみません!お邪魔してます!」佐々木さんも、ちょっと驚いていた。
やっぱり、お義母さんは緊張するのね。
佐々木さんは、物腰が柔らかくて私となんだか似ているので、仲良くなれそうな気がした。ずっとこうして他愛のない話しができそうな、そんな気配を感じていた。
ここまでは。
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