「時がたつのを待ちましょう」綿埃2
ヴァンパイアのカウンセリングで、さんざん聞かされるセリフだ。
このセリフが出たら、これ以上話したってしょうがないと思ったほうがいい。
だいたい、ヴァンパイアにとっての時間ってなんだ?俺たちは時間でできているようなものだ。
俺たちには時間しかないといってもいい。ったく、もし「時は金なり」ってことわざが事実なら、俺たち全員、大金持ちだ。
なるほど、なるほど。
ということは、今時間がけっこうある私はお金持ちなのかもしれない。
失業保険はあと三週間くらいあるので大金持ちまではいかなくてもお金持ちだ。
さあやはこのお金を持って、明日はKくんとピクニックに行きたいな、河川敷とか、
景色の綺麗なところにサンドウィッチと煮出したお茶を持って行きたいなと思いました。
河川敷なら、きっとお金もあまりかからないし、その上今はお金持ちだから
失うものはなにもない。
「ねーKくん、突然なんだけど、明日って空いてる?」
「明日は仕事だよ。日曜なら空いてるけど。なんか用?」
「今ピクニックに行きたいと思って。近所の河川敷公園に行こうよ。」
「さあやちゃん、俺があの河川敷に行くと思った?」
「だめ?河川敷」
「やーだめもなにも、あの河川敷ホームレスがいるんだよ。」
「大丈夫だよ。そのホームレスお父さんだもの。」
「初耳なんだけど。」Kくんは珍しく驚いた顔をしている。
この顔はこたつに野良猫が入っていたとき以来だ。
「そうだっけ?言ってたと思ったんだけど、ほらしばらくお父さんにも会ってないから
差し入れでも持って行ってあげよっかなって。」
「へぇ。とりあえず俺遠、慮しておくわ。」
「そっか残念。私のお父さんの話しきく?」
「ううん。なんか面倒くさそうだから。俺寝るわ。さあやちゃんもとっとと寝たほうがいいよ。もう1時まわってる。明日も休みだから関係ないかもしれないけど、おやすみ。」
「おやすみなさい。」そうだ、Kくんは貧乏なのだ。
第二第四土曜は出勤なんだった。
6時50分に家を出て、帰宅すると19時20分くらい。
けっこう貧乏なはずだからしょうがない。
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