節子と節分
確か前回サエキが死んじゃったことになっていた気がします。
そこから続いているのかな?
節子はサエキを転がし終わると、
家に一旦入ってスマホを取ってきた。
あれー119番だっけ。
緊張するけど電話かけてみよう!
スマートフォンから119番に電話をすると
「はい。赤羽消防署です。火事ですか?救急ですか?」
と窓口が訊いた。
「え、消防?すいません、番号間違えました。
でも救急車って来てもらえたりします?」
「救急ですね。場所を教えてください」
「東京都北区赤羽ーごにょごにょごにょです」
「状況を教えてください」
「アパートの前に男の人倒れていて動かないです。」
とまあ救急車がきたときのごくありがちなやりとりをして救急車がきた。
呼んでないパトカーもきた。
「すいません、私これから仕事なのでそれじゃ」
サエキは運搬されて行った。
ひとつふたつ気がかりなこともありサエキのスマートフォンは
処分できなかった。
皮の収納力がなさそうなハンドバックの中には
使っている形跡のないガラケー2台と
スマホの充電器とハンカチ、テッシュ、目薬が入っていた。
財布は持たない主義でマネークリップとクレジットカードを2枚を
所有しており、
さぞおつりの小銭がじゃらじゃらして煩わしいだろうと思っていると
タクシーに同乗した際
「いらなーい。とっといて」とお釣りを受け取らなかったので
じゃらじゃらと音がしない謎が解明した。
「いらなーい。とっといて」は私の中には存在しないワードなので
ひどく感銘を受けた。
でもこの先一生使うことはないだろう。
現やまくち組(くみと発音するらしい)の若頭であるサエキは
ヤクザ同士の抗争を避けるために母体である団体を脱退、
やまくち組を作ったらしい。
組長は現在不在で募集中だそうだ。
あと、作った、という表現が適当であるとは思わないがヤクザのことは
これっぽちも分からないのでご了承いただきたい。
サエキはいびきこそうるさいが賢い男で
「ネーミングにおける脱力効果論」を知ってか知らずか
団体名を「やまくち組」(くみと発音)とすることによって
母体団体から「やまくちくみ?いいにくいじゃねぇか」
「誰だよそれ。どこの女だよ」
とまともに取り合ってもらえず、曖昧なまま脱退を果たした。
脱退も違うかもしれない、たしか正確には除籍扱いだそうだ。
なんて言っている場合じゃない。
私はこれから「お賽銭」について考察しないといけないのであった。
収納力がなさそうなハンドバックを可燃ゴミの袋のなるべく
真ん中に入れて、
ゴミを出す。
「お賽銭」のことを考えながらあの子たちのあの人たちのことを
考えよう。
香典返しに貰った煎茶を入れノートパソコンを開く。
サエキの形跡はスマートフォン一台を残してなくなってしまった。
「節子ちゃん……」
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