今度、ミイラを取りに行きます。



「そのゴールっていうのは目標のことですよね?」
「うーん、目標とはちょっと違って『ゴール』というのが適切かもしれませんね。」

電話口でいつも「もしもし」と言ってしまう癖をそろそろ辞めたい節子は

頭の半分では「もっと上手くお話できるようになりますように」と考えながら

むやみやたらカタカナ語が羅列する説明を訊いていた。

フィデューシャリーデューティー。

なんで「受託者責任」と言わないのですか。と、うっかり訊きそうにけれど
そこまで大人気なくはない。

フィデューシャリーデューティー。
今度受託者責任を感じたときに使ってみよう。

今度の案件は一言でいうと、、、、なんだけど、
これを口外することは「止めたほうがいい」と禁じられているので秘密にしようと思う。
お願い事を人に言うと叶わなくなるって言うし。

なんでもソレは遠い未来に働きかける作用があるという。

ソレの創始者の経歴はエリートコースとはちょっと外れているのかもしれない。

天才肌を感じさせるような、医学、天文学、脳科学、社会学など多岐に渡り
とりあえず私には検討もつかないくらい頭がいい人なんだろうな。

「受講後、利益率がなんと700倍になったんですよ。利益だとそこまでいかないんですけど利益率だと700倍!」

この言っちゃああれだけどちょっと胡散臭い説明をしているのは、ソレを学んで人にも
広めて仲間を増やそうとしているみたい。
直接姿を見たことはないけれど、依頼画面のアイコン上は黒縁メガネのどこかで見たことありそうな20代前半の青年だった。

「かと言ってお金をゴールにするのは最悪なんです!よくいう話なんですけど、ウォール街で働く人たち。彼らの平均年収はいくらだと思います?6000万ですか?あー惜しいですね!正解は650億です。それだけ稼ぐとみんなセミリタイアするんですけど、退職後の余命ってわかります?2年なんですよ。信じられないですよね!」

引き合いに出したマグロが泳ぐのを止めると死んでしまう話とはちょっと違うような気がしたけれど、なんでマグロって泳ぐのを止めると死んでしまうんだろう。
あとで調べよう。

集中力が途切れたから要約すると、すごい人が発案した秘密だけど米国有名企業の何割かはやってるソレ。
有名アスリートもやってて結果にコミット!ってざっくりこんな感じ。

そこからが重要な話だった。
ゴールの話しになるんだけど、

おっと誰か来たようだ。
節子はPCを閉じて伏せた。












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