あんまし怖くない【学校の怪談】


昔からこの子は、ちょっと鋭いというか賢い子だとは思っていたんです。

「今日は学校どうだった?」
「楽しかったよ」

2年生に進級したての娘を迎えに行ったときのことです。

近所の子どもたちに混じって、お天気のことや今日の学校のことをなど
他愛もない話しをしていると、アユミが

「お母さん、今日は匂いが違うね。ホテルのシャンプーの匂いがする。」
「ええ、そう?」

「うん!とっても、いい匂い。ねぇ、タクミくんもそう思うでしょ?」
「ぼくわかんない。」

「えー、そうだよぉ。絶対、◯◯ホテルの匂いと一緒だよ。」
「いつもと変わらないと思うけどなぁ。」

今でもこの会話から、どうして?という疑念しかありません。

別の日の夜のことです。

「知らぬが仏。仏の顔も三度まで。」
アユミが思い出したように言いました。

その次の日は、「馬の耳に念仏。猫に小判。豚に真珠」

また別の日は、「目には目を。仏の顔も三度まで。」

独り言でことわざをぶつぶつと言い出したのです。
授業で習ったのかを尋ねるとそうではないと言います。

そして意味もわからないそうです。
「でもなんか知ってるんだよね!すごいでしょ。」

私が知らないようなことわざもいつも間にか覚えてしまったアユミ。
一体どこで。

結論からいうと、
「学校の階段に一段一段にことわざが書いてあった」のです。
2年生になったアユミは階段を毎日登るようになって、階段に書かれてある
ことわざを暗記しただけなのでした。

何度か学校には出入りしたことがあったはずなのに
どうやら私は気づかなかったようです。

PTAの始まる前、「アユミさんのお母さん、ちょっと、、」
担任の先生に呼び止められました。

「今日ですね、学校でうんちを失敗してしまった子がいて
それをですね、アユミさんが踏んでしまって。上履きを汚してしまったんですよね。」

「えっ。それはご面倒をおかけして、すみませんでした。」

「それ、おとといもだったよ!」話しをきいていた同じクラスの子が口を挟んだ。

「もちろん消毒してきれいに拭いておいたので」

そんなことってあるの?
2年生でそんなに粗相をする子がいるのがまず信じられなかったし、それにおととい?そんなに立て続けに?

その失敗してしまった子のことももちろん気になるし、
私におとといのことをアユミは一切話さなかった。

もともと衛生的だと思っていなかった上履きだけどその話をきいてから、
ずいぶんと汚らしく思え、床も、廊下も、階段も、そこいらじゅうが不衛生に思えてきました。

「知らぬが仏」
階段に書いてあったのを思い出した。

そうだ、それにおとといはたまたま外で遊んでいるアユミを迎えに行ったら
私の見ている前でお友達の虫取り網を折ってしまったんだった。

「もう古くなってボロボロだったし、100均のだから、気にしないで」

「ごめんなさい。ほらアユミもちゃんと謝った?」
「うん、まぁ。でもこの前はアユミの帽子を川に流されたの。そのとき謝ってくれなかった。スーパーボールもなくされたよ。」

「知らぬが仏」
迎えに行かなければ良かったと思いました。

さらにPTAの帰り私に関する変な噂が流れているよっていうのを
、仲良しのママからきいたのですが
これも知らない方がいい話しで

人の噂はなんとかっていうことわざもありますが、

しばらくこのお母さんはノイローゼになってしまったという怖い話です。








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