バスに乗って
「大丈夫ですか?」っていうのは、
「大丈夫じゃないように見えるので、
不調法ではありますが声をかけさせてもらいました。
もし良かったら手を貸すこともできますが」
って意訳してもいいのでしょうか。
あまり大丈夫じゃなかった私は
「大丈夫です。」と手短に応えるのが精一杯でした。
母くらいの年代の清潔そうな女性は桂馬の稼働範囲の斜め後ろに座っていて、
高速バスで仙台駅東口に着くまでの
2時間30分くらい私たちは視界に入っていたはずです。
子はうきうきとバスに乗り込んでほどなくすると寝入ってしまい、
このままサービスエリアを過ぎて仙台に着くころに起こそうなどと
そのときは軽い気持ちで子の顔に直射日光が当たらないようカーテンを引いて
文庫本と子の寝顔に目を落としました。
サービスエリア着いて息子は眠ったままなのでそのままにしていましたが、
出発時刻の3分ほど前になって起き出し
「お母さん、お腹空いた」と言うのです。
ご飯は朝出かける前に通常と同じくらい食べ、
おやつを持ってきていないことはしくじりましたが
まあ我慢できるだろうと思ったのが間違いだったのでしょうか。
「もう、バス発車しちゃうから我慢しよう」
「お腹すいた!」
声を抑えながらも強い語気で訴えます。
何度か同じやりとりを繰り返した時間は
すごく長く感じられて
急げばお菓子くらい買いに行けたんじゃないか、
そんな気もしてきます。
子はついに涙をこぼし、おなかが空いたと言って
私の髪の毛をはむはむと上唇と下唇を使って食べ始めました。
そんなことをされるのは初めてでしたが、
いつもならやめて、と言っていたはずです。
でもここはバスの中で声を出すとかえって注目される危険もあったので
そのときはそのままにしていました。
斜め後ろの女性が気になりましたが、もう仕方ありません。
幸い髪を食いちぎったりするような食べ方ではなかったので
されるがままになっていました。
そのあとのことはよく覚えていませんが、子はまた眠りに落ちて
バスが終点に着きました。
120cm・25kg程度重さの人はだらんとしていて、座席から出すのにの
苦労しました。「起きて」とゆすっても何をしても反応がありません。
子のリュックは財布とおもちゃでずっしりとして
それを指に引っ掛け、通路に出てしこもこしていたとき
「大丈夫ですか?」と斜め後ろに座っていた女性に声をかけられました。
「ええ」と答えて、まだだらりとした子を抱え
ちょっと腰を下ろせる場所を座って
また立ち上がろうとしたとき、
子ども連れの若い母親から「大丈夫ですか?」か声をかけられ
それから120回くらい「大丈夫ですか」と訊かれ
すっかり大丈夫じゃなくなってまたバスに乗って帰ってくるまでのお話。
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