【電話をかける仕事】1件目

 私は75歳になって、3ヶ月ほど経ちますが

8歳の時も45歳のときも私は私のままで、何一つ変わっていないような気がしてしまいます。

75歳になっても、まったく成長がみられず

成長どころかつまらない失敗を繰り返していて、嫌気がさしますが

最近はもう年なのでしょうがないかな、と思うようにしています。


私の今の仕事は、電話をかける仕事で

毎日大阪にある介護施設に片っ端から、といってもリストがあるので

そのリストの片っ端から電話をかけています。

その前は神奈川で、その前は札幌と、気付けばもう8年ほど日本全国の介護施設に電話を

かけております。


「75歳の老人が介護施設に電話」というと、

あたかも自分や配偶者が入居するために電話をかけているように思われるかも

しれませんが、

8年も施設を探す人はそうそういないと思いますし、

これはれっきとした委託された仕事です。


仕事内容は、介護施設に「生活保護でも入居可能かどうかをきく」それだけ

と言われれてばそれだけなのですが

どういうわけか、即答しれくれない介護施設がほとんどで

「もしもし、生活保護でも入居できますか」

「はい。大丈夫ですよー」という介護施設はだいたい30件に1件ほどです。


さらに、これが調査目的と伝えると電話口の方は大体警戒してか

「結構です!」「いりませーん」「間に合ってます」などと

物を売りつけるつもりなんてないのに、私がまだ話ししている途中でも電話を

切ってしまうので調査になりません。


このミッションは一件でも多くの介護施設から情報を聞き出すことが目的なので

このように電話を切られてしまった場合でも、必ず、どうにかして

聞き出さなくはなりません。


その時はどうするかというと、8年の努力の賜物なのであまり口外したくありませんが

「親の介護施設を探している」と年老いた親を持つ娘を演じるわけです。


すっかり言い忘れていましたが、私は声だけ異様に若く、

若い頃はよく「アニメのキャラクターみたい!」「声優になればいいのに」と

友人に言われたりしたものでした。

若い頃ならそれで済まされていましたが、年を重ねるごとに声が若いという

印象より違和感のほうが強くなりました。

そして40代半ばまで勤めていた大型スーパー内のお客様の声に

「〇〇店 ○○という女性店員 いい年なのに声がきゃぴきゃぴしていてとにかく不快です」

と、書き込まれていたことにひどくショックを受け

追い討ちをかけるように、店長に呼び出しをくらい

「これにコメント返さないといけないんだけど、どうしたらいいと思う?」と

意見を求められ、

長年一緒に働いていて、この年齢に不釣合い声に、少なからず

困りものだ。と共感していると思っていた同僚Aからも

「声もだけどさ、真田さんの話し方も少し問題もあるんじゃないの」

などと言われたものですから、早急にその洋菓子店は辞めてしましました。


早急に、と言っても、きちんと手続きを踏んで辞めたのは

自分でも偉かったと思います。

とにかく買い物に便利だった元勤務先の大型スーパーにもすっかり立ち寄れなくなって

しまって

他店であってもお客様の声のコーナーを見かけるたびに背中に変な汗を掻いて

内容も見ずに「可哀想に」と思うのでした。








コメント

人気の投稿