【無題】三杯のかけ蕎麦
とある休日の出来事です。
ぼくたち家族は、お父さんの運転する紺色のプジョーで
家族でよく行く道の駅の蕎麦店へお蕎麦を食べに行きました。
いつも決まって頼むメニューは、名物の冷やがけ蕎麦です。
そしていつものようにお母さんがお蕎麦を茹でているカウンターの店員さんに
注文を伝えました。
「冷やがけの大と並と小で」
お父さんはもちろん大、ぼくが並、小食のお母さんは小を食べます。
お蕎麦が茹で上がるのを待つ間に
天ぷらや小鉢を選びます。
ぼくはあまり天ぷらには興味がなく、お蕎麦を食べてお腹に余裕があれば
横で売っているアイスを食べるのが常でした。
この日もチョコレートのアイスを帰りに買えたらいいな、と思っていました。
茹で上がったお蕎麦を受け取り、ぼくたちはベルトコンベアーのようにお蕎麦、サイドメニュー、会計へと流れていきます。
お母さんの会計の番なりました。
お母さんはこの前ゲットした地域の飲食店で使える商品券を出したところ
「そちらは使えません」と言われていました。
商品券を戻して、お財布から紙幣を出すのかなと思ったら
どうやらあまりお金を持っていなかったようで
横にいたお父さんが、「何してるんだよ」とお母さんの財布から
トレイに500円玉や100円玉をじゃらじゃらと出しました。
すると急いでいたのか100円玉はお母さんの小のお蕎麦の中に
ぽちゃ、と入ってしまいました。
急に怒り出したお父さんは、100円玉の入ったどんぶりを
ひっくり返し、ぼくたちは蕎麦店に取り残され、、
ということはなくて、
たまたまお母さんがお父さんに
「あげる」と渡していた千円札がスマートフォンのケースに入っていたので
その千円を使って支払うことができ、これで一件落着だなと思ったのですが
その後ぼくにも災難が降りかかりました。
「ちゃんと使える店を確認しとけよ」
「私、そんなにおなか空いてないからこれ全部食べていいよ」
今まで外食した中で一、二を争うほど険悪な雰囲気で
お父さんは自分の大のお蕎麦にちゃっかりと七味をかけてしまったので
ぼくが100円玉の入ったお蕎麦を食べました。
わさびは好きなのですが、七味は苦手です。
生来、きれい好きで硬貨や紙幣の汚さについては
知っていましたがそんなことより今は家族平和が優先されます。
もし100円玉入りの冷やがけで命を落とすようなことがあれば
両親も心を入れ替えるに違いない。
そう思って、ぼくは美味しいお蕎麦をすすりました。
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