【本当にあった】消えたキャッシュカード【怖い話】

 

春先の埃っぽい空気を潤すような霧雨が降る日でした。

その日は息子の所属する吹奏楽部の会計の引き継ぎがあったため、

今時珍しい現金で支給される夫の給与の預入れもあったため引き続き資料とキャッシュカードと給与を持って銀行へ向かいました。

待ち合わせよりずいぶん早く到着したので、先に給与の預入を行なって

5分前頃に銀行の前に立っていると、新しい会計の代表が着いたのが見えたので

会釈を交わしました。

この時まだ、恐ろしい惨劇が起こるとは露知らず

「お待たせしました」「私も今来たところです」などと会話を交わして

私たちは銀行の自動ドアに吸い込まれるように入った。

幸いその日は窓口はあまり混んでおらず、私たちの前には2人の客が手続きをしているだけです。

「平日、お仕事お休みなんですか」

「仕事なんですけど、この時間だけ抜けて来ちゃいました」と話しているうちに

200番が呼ばれ、手続きを行う。

通帳の名義変更を行なっている間に、残金の入金を行わなければならないことを思い出し

窓口の女性に伝え、さらにキャッシュカードの名義変更も行わなければならないことに

気がつきました。

その時です。吹奏楽部代々の通帳が入っているポーチに、入っているはずが

キャッシュカードがないことに気がついたのは。

そういえば、キャッシュカードを発行してもらい一度も使っていないのに

磁気不良で使えなかったことがあったのだ。


その時に、キャッシュカードと通帳を別々にするように言われてそれを実行した時期もあったため、急にポーチに入っていたかどうかが不安になってきました。

通帳の入っていたポーチをもう一度確認させてもらったが、やはりキャッシュカードは入っておらず

「ごめんなさい!5分ほどで戻りますから、手続きをすすめていてください!!」

と、言い残して私は急いで自宅に引き返した。

背中に汗が滲む。

自宅に戻り思い当たるところを探したが、クレジットカードは、やはり、ない。


もうこうなった以上、死んでお詫びするしかないがまだ自宅を全て探していないし

他にも持ちカードを歩いたとがある。

銀行にずっとお待たせするわけにもいかないので、またすぐ銀行に戻り

その旨を伝え、

「キャッシュカード捨てることはないと思うので、もう一度よく探してみます。お待たせして、すみません。」と謝る。

幸いまだ名義変更の手続きには時間がかかっており、待たせてはいないようだった。

「もし見つかったら、会長さんにカードを渡してもらっていいですか?会長さんのお家は知っているので」

「いや、でも悪いですし、部活が終わる時間頃に私行きます!!」

カードを紛失してしまったのが他の方に知れるのも嫌だったので、どうにか直接渡させて欲しい。

それにしてもキャッシュカードはどこに行ってしまったんだろう。

保育園の会計で通帳を無くしたという人に何かと勇気をもらっていたが、今度は勇気を与える側になるのだろうか。

そうこうしているうちに名義変更が終わり、通帳が戻ってきた。


「FJちゃんさん」と、笑顔の次期会計が掲げたのは通帳ケースに挟んであった

キャッシュカードでした。

私は、「よかったぁ」上擦った変な歓喜の声を上げ、思わず大きな声になってしまい恥ずかしくなった。

そしたその次期会計方には、上にお子さんがいて、部活の会計を経験されているらしい

「会計のこと偉そうにいろいろ言っちゃいましたが、丸山さんベテランじゃないですか」


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