愛馬と馬術競技会に出たよ!(通算8回目くらい)
おはようございます。
米ほどじゃないけど、郵便料金も値上げしててちょっぴり悲しいFJちゃんだよ。
熱心な読者の方はご存知だと思うけどFJちゃんは馬に乗っていて、
去年の冬に馬も買ってしまったのだ。
今日は馬の気持ちになって日記を書いてみたいと思います。
尚、馬名は名前は仮名です。
9月某日
今日は朝からクラブがせわしい雰囲気だ。
こんな時はどこかへ連れて行かれてうっかりご飯を食べそびれてしまうことが
あるため、僕はいつも以上に急いでご飯を食べた。
何かあるのだろうか。
せわしい雰囲気は他の方にも伝わるようで、銘々いなないたり
馬房を蹴ったり、ますます賑やかになってしまうのだ。
僕はご飯さえ食べられていいので、あまりそれに構わずお隣のサンダースに挨拶をして
そうこうしているうちに出かけるらしいということが分かった。
僕はすんなり車に乗ってしまうので、最初に積み込まれることが多いのだが
その日も僕が1番だった。
先輩方と一緒に1時間ほど馬運車に乗って、初めての場所に連れてこられた。
そこには仲間がたくさんいて、競走馬時代を過ごした厩舎を思い出す。
お隣になったクラブのことなら何でも知っているベガじいさんに話しを聞いてみた。
「これは『競技会』と言ってな。お前も出たことがあるだろ?」
「多分あると思います。最近、急に障害物を飛ぶ練習をさせられたのはそのせいですかね」
「そうだろうよ。まあ怪我しないように、そこそこに頑張れよ。
でもよ、あれだろ。お前さんは競馬で走ってたんだろ?」
「一応はですけどね。正直、今の暮らしのほうが合ってると思います」
そうなのだ。食べて寝て、人を乗せて軽く運動して
今の時期嫌いな虫やハエが多いのを除いては、快適な暮らしだ。
9月某日
今日も僕の出番はないようで、食べて、ボーッとして
暇だったから、つい鞍の上に置いてあるゼッケンを落としてみたり
ハミについている革を噛んでしまった。
これは僕の習性や体格を理解していない人間がいけないと思う。
9月某日
今日で大会3日目。僕の出番があるらしい。
僕と同じ頃に競馬を引退した馬が障害を飛ぶ競技らしいのだけれど、
正直なところ僕は馬なのでどんな風に走ったらいいのか、分からない。
競馬の頃は観客の前でみんなと一緒に一斉に走り、
1着になるとたくさん褒めてもらったので、とにかく速くゴールすればいいのだな。
ということは感覚でわかってきた。
でも、今やるのは人を乗せてバーを飛び越える競技で一緒に走る馬はいないし
僕の長い脚はしょっちゅうバーに引っかかった。
バーがぶつかると痛かったけれど、人も乗せているしとにかく安全第一を目指してみた。
出番だ。
アナウンスが流れ、僕の紹介がされる。
僕の祖父はディープインパクトという有名な馬だそうだが、先に走った方は
父がディープインパクトでつまり僕の叔父さん?
兄弟も親戚もたくさんいるけど、その中では僕はあまり活躍しなかったほうなのかもしれない。
勝ったら褒めてもらえたり、人間たちは喜んでいたけれど
ご飯の量が増えるわけではなかったし、レースのモチベーションが下がった。
徐々に勝てなくなり、今はこうして乗馬クラブで生活しているんだよな。
開始のブザーがなり、僕は駈けた。
昨日はまったく運動していなから体が重かった。
騎乗している人間は僕の扱いが上手く、どこに行きたいのか明確にわかり
右へ左へ旋回しながら、バーを飛び越える。
しかし安全第一で走ったら、やはりバーを4本も落としたし、
タイムも遅かった。
でも人間を落としたり、バーを飛ばなかったり反抗的な
ことはしなかったので良しとしよう。
こうして僕の競技は終わった。
そうして、待ちに待ったお昼ご飯を食べていると
また出番があるのか人を乗せるための準備、馬装をさせられて
お昼ご飯は中断されたのだ!
少しイラッとしたが、僕はお仕事をしてご飯をいただいているし
また戻ればご飯は絶対残っているから渋々我慢した。
次は人間の子供を乗せて、歩く
いわゆる「引き馬体験」というやつだ。
先輩のマルガリータばあさんや、ホッピーくん、そして僕の3頭で変わるがわる
子供を運んだ。
競馬場のイベントで見たことがあったけれど、まさか僕も引き馬をする日が
くるとは思わなかった。
それもこれも僕が気性のおとなしい馬だからだろう。
早く戻ってご飯の続きが食べたい。
この引き馬ってやつは、歩くだけだけど、観客が大勢見ていて
賑々しいし、なんだか僕は少し気が立ってしまったぞ。
馬房へ戻る途中、軽く、ほんと軽くだけど、暴れてしまった。
ごめんなさい。
でも、ご飯の妨害はこれだけではなかったんだ!
僕のご飯代を払ってくれているFJちゃんが、なにやら声をかけてくる。
「また出番なの?」人間の言葉が話せたら、きっと聞いていた。
人間が馬装をする時は、そのあと僕に乗るためだから
諦めるしかないんだ。
FJちゃんは僕のたてがみを三つ編みに編んで、団子状にまとめたり
普段はつけない「イヤーネット」というネイビーの帽子を被せてきた。
たぶん特別な日だからだろう。
されるがままになり、その間もできる限りご飯を食べた。
FJちゃんが騎乗し、他の方たちと一緒に馬場で比較的自由に
運動をした。
この時はなんだかお祭り気分で楽しかったんだ。
僕より背の低い月毛のずんぐりした子や、
僕より少し後輩のマックス。
初めて会う方々と少しの間だけど、一緒に広い敷地で過ごすのはあまりない体験だ。
それも競馬時代のような張り詰めた緊張感はない。
そのせいかいつもはちゃんと合図しないと出さない駈足が自然と出てしまう。
FJちゃんも楽しそうに好きな図形を描いたり、
先生からの指示でゆったりと並足をしたりしているうちに
僕の出番が近づいてきた。
出番待ちの場所は僕が嫌いな薮が近くにあって、見知らぬ人間もうろちょろしていて
不穏な気分でしかない。
見かねた先生が僕を少し誘導して、落ち着かせてくれたけれど
すぐに出番が来てしまって
そわそわしたまま、僕は初めて馬場の競技に出たんだ。
とはいえ、僕は馬なので「はいこれが馬場馬術競技」なんてことは知らない。
合図されたように歩いたり、走ったりするだけで、
僕の能力ももちろんだけど、騎乗者の技術が大きく問われる。
偉そうなことを言わけてもらうと、FJちゃんは少し頼りなかった。
不穏な僕をもっと落ち着かせて欲しかったけれど、それは無理だったのかもしれない。
白い木枠で囲まれた馬場に入場すると、
僕はテンションが上がって
停止から発進して一歩目、本当は速足(トロット)という歩様で
なければならないのに
不思議と駈歩が出て、恐らく人馬ともに「なんで」だったと思う。
そこからFJちゃんが騎座で
「速足だよ」と教えてくれて、斜めの直進は速足で進むことが
なんとかできたけれど
問題はそのあとだった。
FJちゃんは僕を活発に動かそうとして、脚合図をしてくれたんだと思う。
でもその時の繊細になっている僕にはそれが駈歩発進の合図と思えたんだ。
「おし駈歩!」
障害で速く走れなかったことに少し後悔がある僕は、
見てくれと言わんばかりの元気な駈歩を披露した。
FJちゃんのことは少し忘れるくらいスピード上げて馬場の中を
ぐるぐると3周くらいして頃には
背中のFJちゃんが「ほーほーほーほー」って
つまり「止まって」と言っていた。
こうして僕の大会は終わった。
おしまい。
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